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楽天とRoktが語る『NRF APAC 2024』 ~小売業界の最新トレンドと日本のリテールメディアの未来~

EコマーステクノロジーのリーディングカンパニーであるRoktが2024年11月21日にTokyo American Clubにて『The Future of Ecommerce Summit』を開催した。
本記事では、2024年6月にシンガポールで開催された小売業界の大規模展示会「NRF APAC 2024」に参加した株式会社楽天の秦 俊輔氏とRoktの大野 皓平氏の視点から、「NRF APAC 2024」で得られた最新トレンドやインサイト、そして日本のリテールメディアの未来についてのセッションをレポートする。

(Sponsored by Rokt)

 

小売業界で注目のトピック「リテールメディア」の未来

「NRF APAC 2024」で、ホットトピックとして取り上げられたのは「リテールメディア」だった。
楽天の秦氏は、日米におけるリテールメディアの捉え方の違いを「オンライン店舗の取り扱い方」と指摘する。

アメリカでは、ウォルマートなどに代表される実店舗に起因するものだけでなく、Amazonなどのオンラインストア広告もリテールメディアとして扱われている。
一方、日本のリテールメディアは、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストアなどのオフライン店舗、もしくはこれらの小売業が展開するアプリが主体となっている。

しかし、コロナ禍を経てEC利用が拡大した現在、日本でも楽天やAmazonなどのオンラインストア広告がリテールメディアとして認識されるようになる可能性が高い。
今後は、オフラインとオンラインを融合した、より多様なリテールメディア戦略が求められるだろう。

楽天グループ株式会社 マーケットプレイス事業 アカウントイノベーションオフィス
ヴァイスジェネラルマネージャー 秦 俊輔氏

 

 

「NRF APAC 2024」から得られた学び

「NRF APAC 2024」では、様々なリテール事業者の事例や最新のソリューションが紹介された。
その中で秦氏は印象に残ったキーノートセッションとして「ドミノピザのDX事例」を取り上げた。

ドミノピザは、グローバルで2.8兆円の売上高を誇っており、米国においては売上高の80%をデジタルオーダーが占めるなど、DXを積極的に推進している。その背景にあるのは、デジタル化による顧客データの蓄積と活用だ。電話注文では得られなかった顧客データを活用することで、サービス改善や顧客体験向上を実現しているのである。これは、顧客価値向上と顧客起点のサービスを重視するリテールメディアの価値を体現していると言えるだろう。

またドミノピザは、顧客接点を増やし、ユーザーボイスを積極的に取り入れることで、イノベーション(新しい広告)戦略を展開している。例えば、2019年に行われた「自分で描いたピザの写真を送信すればクーポンがもらえる」キャンペーンは、顧客参加型の新しい広告戦略であり、この取り組みによって、顧客データの取得やサービス開発に役立つユーザーボイスを集めることに成功した。

ドミノピザのイノベーション戦略の根底にあるのは「イノベーションは広告になる」という考え方だ。これは、単なる広告出稿とは異なり、イノベーション自体が広告効果を生むという、非常に革新的なアプローチと言える。

この事例は「顧客体験向上とビジネス拡大を両立させるための重要な示唆を与えてくれる」と、秦氏は強調する。
顧客を巻き込んだイノベーション戦略は、取り組みそのものが自然な広告効果を生み出す。ドミノピザの成功例を参考に、企業は顧客起点でのイノベーション(新しい広告)を追求し、顧客体験とビジネス成長の両立を目指すべきだろう。

 

大野氏も印象に残ったキーノートとして、元コカ・コーラのVPであるサイモン・マイルズ氏のセッションを挙げて、リテールメディアを発展させるために大切な“4つのC”を紹介した。

  1. Clarity(正確な計測):リテールメディアは広告投資であるため、投資効果を正確に測定できることが重要である
  2. Capability(知識/組織体制):リテールメディア はまだ新しい概念であるため、経営層を含めた組織全体でリテールメディアに関する知識を習得し、その価値を最大限に活かせる体制を作ることが重要である
  3. Collaboration(本業と広告部門の協力体制):秦氏も指摘するように、リテールメディアは単独部署ではなく、会社全体で取り組むという認識をしっかり持つ
  4. Consumer focus(顧客視点/顧客起点):顧客視点に立った取り組みが何よりも成功の鍵になる

この“4つのC”の中でとりわけ重要なのが、②Capability(知識/組織体制)、③Collaboration(本業と広告部門の協力体制)と筆者は考えている。

この考え方は秦氏とも共通しており、同氏は次のように述べている。
「私が実際に行ったメーカーとの打ち合わせでも、日本では『リテールメディア=営業部門の仕事』という誤解が多いと感じます。リテールメディアの最大の価値は『顧客起点のマーケティング』です。顧客データに基づいた効果的なマーケティングを実現するためには、企業全体でリテールメディアに取り組むことがとても重要です」

リテールメディアを発展させるためには、企業の変革も必要不可欠だ。知識と組織体制の強化、部門間の協力体制の構築こそが、リテールメディアを成功に導く要素であり、これらを疎かにする企業は、リテールメディアの価値を最大限に活かすことはできないだろう。
今後は、経営層が率先してリテールメディアへの理解を深め、組織全体でその可能性を追求する企業こそが、競争優位性を確立し、市場をリードしていくことになるはずだ。

Rokt ビジネス開発 ディレクター 大野 皓平氏

 

 

楽天グループにおけるリテールメディアの取り組み

秦氏は『NRF APAC 2024』で得られた学びをビジネスに活かす道筋として、

  1. 楽天グループが保有する顧客データを活用し、見込み客だけでなく潜在顧客へのアプローチを強化すること
  2. マーケティング、オペレーション、顧客対応の効率化を目指し、AIの活用を積極的に推進すること

の2つを挙げ、顧客データとAIを最大限に活用することで、ビジネスのさらなる拡大を目指していくと語った。

次に、リテールメディア事業についても、楽天市場におけるメーカーブランドページ掲載サービス「Brand Gateway/Showroom」の例を出しながら解説し、顧客データに基づく最適なページ表示やCRM強化など、顧客データ活用戦略に力を入れていくと強く訴えた。

最後に秦氏は、楽天が3つの事業で導入しているRoktのソリューションについて言及し、
「Roktとの取り組みにより、決済完了画面への広告掲載で、新たな収益源を確保しました。この収益を次のマーケティングに再投資することで、楽天グループの発展につなげていきます」
と締めくくった。

 

 

 

ABOUT 町田貢輝

町田貢輝

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学法学部法律学科卒業。編集プロダクション、出版社でエンタメ、健康、IT関連の雑誌と書籍の編集・進行管理に従事。2024年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。DX領域のメディア運営全般ならびに、調査研究を担当する。

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